ごあいさつ

次世代を育む学校を次世代につなぐために

 

茨城県教育研修センター所長 秋本 光德 

 

 4月、新学期とともに、新規採用者研修が始まりました。講堂での開講式にて、初々しい姿を前に挨拶をしました。冒頭で、「教員は面白いと思う人?」「辛いと思う人?」と挙手を求めました。目視で前者は約9割、後者は約4割という回答でした。オフラインでの研修は、教職の楽しさや辛さを同期と共有できることに加え、新年度早々とは言え、何より、職場を離れることで自分の今をメタ認知できる良い機会となったようです。初任者の皆さんの姿から、GIGAスクール構想が目指す、誰もがいつでもどこでも学べる時代にあっても、学校が、諸々の感覚すべてを用いて仲間と向き合い、即時的にレスポンスし合える重要な舞台であることに、改めて気付かされました。

 昭和44年制定の本県教育の目標は「ひとりひとりの能力を開発し、豊かな人間性をつちかう」から始まります。世は、1人1台端末を手に、家庭との連絡はネットで、教科書もデジタルで、諸データの管理もクラウド上で…という時代になりました。教員の役割ややりがいについては、どのように捉えたらよいのでしょうか?

 「能力を開発」するという点からは、主体的・対話的で深い学びのプログラム・コーディネーターたることが求められます。キラリと光る教材や面白い切り口、さらに、「?」を膨らませることのできる優れた問いとそれを起点とした問答など、学び取ってもらいたい中身が心を動かすような展開の工夫が必要となります。そのために、事前に、授業での思考・対話などを想像し、楽しさを予感しながら準備している時間のあのワクワク感は、教員ならではの醍醐味です。そして、授業本番で子どもたちが眼を輝かせた姿、また、新たな疑問が湧いてモヤモヤし始めた姿、課題を解決できプレゼンを成功させて自信を得た姿…これらを目の当たりにして味わう充実感・達成感もまた、教員になった者の特権です。思うように展開できなかった場合を含め、次の授業をブラッシュアップしようとする意欲を湧き起こすことにもつながります。教員もアクティブラーナーたることが求められる所以です。

 一方、「人間性をつちかう」という点からは、子どもたちの心身の発達・成長に寄り添い、それぞれの困難や課題の解決に向け伴走するメンターたることが求められます。感情労働といわれる所以です。思春期(反抗期)などの発達課題はもとより、多様性、さらには友人や家庭の状況、進路や学力など様々な悩みを克服するまでの道程を楽しみながら支え続けることが重要になります。そして、課題を乗り越えた子どもを遠くからでも眺め、ガッツポーズをとったり、自立・巣立ちに立ち会い涙したり…というのも教師冥利に尽きるシーンです。

 本センターは、学校教育に関する理論と実践の「教育研究」をベースに、教員を志望する大学生等を対象とした「教員養成」と現役の教職員を対象とした「教職員育成」のための研修講座、さらには、各学校の校内研修をサポートする「研修支援」を企画・運営すること、加えて、実際のお子さんを対象とした「教育相談」や、茨城県教育情報ネットワークの運用等を通しての「ICT活用支援」を本務としています。学校を、子どもが主役として出番を得て楽しく学び躍動できる場にするために、実践的専門性を絶えず磨かれている教職員の皆様をインスパイアするべく、私たち職員も、アクティブラーナーとして、研修講座のプログラム・コーディネーターとして、受講者や研修支援対象校の皆様のメンターとして、共にアップデートを重ねてまいりたいと考えます。普段の情報共有を含め、どうぞ奮ってご利用いただければ幸いです。